多世代共生エコビレッジの旅 第5話|ユルレポ海外

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第五話「社会的実験 Social Experiment」

株式会社グラディエ 代表取締役 磯村 歩


 デンマークのオーフス市から約15キロ程にある「Andelssamfundet」という多世代が暮らすエコビレッジに訪問した。1992年に10人程度の住民から始まったそうだが、今では110軒程の家が建ち並び、200人が5つのグループに分かれて共同生活をしている。

 案内してくれた日は土曜日の午後で、数人が共同施設(下写真)の建築作業中だった。完成まで12年程かかるとのことだが、リサイクル素材を使いながらゆっくりと進めている。ゴミだった貝殻を砕いて建築材料にしたり、極力廃材が出ないように逐一皆で検討しながらやっているという。途中で設計を変更することもあるそうで、子供がやっと通れるくらいの穴を見せながら「壁が出来てから、直接ダイニングルームに行ける通路が必要だと思ったのよ」と、なにかとても楽しそう。「ここの漆喰は、フランスから来た住民に教わったものなの」と自慢げな話し振りから愛着たっぷりの様子が伺えられる。因に土曜日はビレッジのために働く日なのだという(年間計15日)周囲にはユンボーに子供を乗っけて作業している様子もみられた。

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 自分たちのヒーティングシステムも持ち、近隣で伐採したウッドチップと太陽温熱器を組み合わせ自分たちが消費する95%以上の温熱エネルギー(温水、セントラルヒーティング)を賄っているという。またデンマークの国内企業と共同し「Stirling engineによる発電も試みている。住宅自体も「Passive House」という太陽光で暖められた空気を住宅内に循環させる仕組みを持たせ、光熱費の削減を図っている。また太陽電池パネルも活用している。

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 ここの住人のCO2排出量はデンマークの一般家庭の60%程度に抑えられているという(家庭での排出に加え、通勤、旅行など全ての生活行動も試算にいれている)住民同士で共有する車(2台)、ランドリーなども持ち、また鶏100羽、山羊10頭、牛15頭、コーンや野菜の畑も運営している。このビレッジの自治は定期的に開かれるミーティングの場で検討される。通常のオペレーションもあるが、どこに何を作って行くのかなどのビジョンもここで検討される。

 案内してくれたアンに、ここに住み始めた理由を聞くと「従来の均一的な住み方ではなく、サスティナビリティに配慮した自分たち自身で考える暮らし方をしたかったの。そしてここは、環境に配慮した生活、人生、そして社会の実験場(Sustainable Life and Social Experiment)。日々いろいろ工夫してやっているのよ」という。このSocial Experienceというキーワードは「クリスチャニア」の住人からも聞いていた。そこで「クリスチャニア」との違いを聞くと「彼らはイリーガル(軍事施設を乗っ取る、ハッシュを吸う等)なことをしているけど、私たちはあくまで合法的にコムーネ(市に相当する)と折り合いながら運営している点が大きな違いよ」という。

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