究極で本質的なエコビレッジ「木の花ファミリー」
69名(2011年4月3日現在)が共同生活をする「木の花ファミリー」(静岡県富士宮市)は、有機農業を営み、約16ヘクタールの田畑に110品目、250品種を越える作物を育てています。そして、食事は全て自給自足です。決して高価ではありませんが、味がしっかりしていて、美味しい食事。とても豊かだなぁと思いました。子供たちは20人(0歳〜中学3年)、最高齢の方は71歳とのことです。
こうして自然にやさしいサスティナブルな生活を営んでいるわけですが、そのコアとなる精神性(ワンネス)を生活の中心に据えている点が他のエコビレッジと大きく異なる点なのかもしれません。人間も自然界のひとつの要素だという意識(「私たちは生かされている」)があってこそ、自然に対する畏敬が生まれ、それが本質的なサスティナブルライフに繋がります。
食事の前には必ずお祈りをします。子供たちの「お祈りします。いただきます、します」というかわいいかけ声の後に一斉に食事がスタート。料理が並べられた大きなテーブルには「ウエスパン」というお皿を綺麗にするためのパンが置かれています。食べた後のみなさんのお皿は、洗わなくてもいいくらいとてもきれい。私は、隣の方のお皿を見て、すこし恥ずかしくなりました。また食事後のミーティング時には、全員で輪になって、地球と人間とが一体となる瞑想を行います。そして農業、食事などの運営面の打合せのほか、自己をさらけだすような対話の時間もあります。ゲストが来た時には住民によるミニコンサートが開かれますが、その歌詞は精神性(ワンネス)への想いがつづられたものになっています。収入の全てを共有し、1年間の1人当たりの収入はなんと70万程度。そしてファミリー内の施設も、互いに出資し合って共有しています。
子供たちによる「子供ミーティング」も大変ユニークな取り組みです。60名弱の大人の前で、年長の子供たちが議事進行をしていくわけですが、大人たちからの厳しい指摘にもたじろがずよくやっています。大人になるにつれこの経験がいろんなところで役に立つことにきっと気づくんでしょうね。こうした自然との共鳴、住民同士の一体感の醸成は、サスティナブルなコミュニティを持続維持する上で、とても合理的な方法なのかもしれません。
まるで多世代が一緒に暮らす大きな家族。確かにこれからのコミュニティが理想とする一つのカタチであるように思います。超高齢化による無縁社会化、孤独死などは、地縁・血縁の崩壊がその根底にあるといわれています。ここでは地縁・血縁を越えた新たな相互扶助のあり方が模索されています。そして環境問題は、言うに及ばず、自然に対する畏敬の念の喪失にあるといえるでしょう。ここではその精神性に着目し、人間の内なる動機からサスティナブルライフを構築しようとしています。さらには、こうした精神性や健康的な食事と生活が病んだ心を癒す効果があり、自然療法プログラムを通して多くの方々を治癒した実績があるといいます。
こうしたコミュニティが存在することに、ただただ驚くばかりですが、今では年間2,300人もの訪問者を受け入れているといいます。ここは本質的だからこそ強く人を惹きつけるのかもしれません。さて「木の花ファミリー」では、旅館を完備し、体験ツアーなどを通じて常時、訪問者を受けいれています。みなさんも一度、体験してみてはいかがでしょうか。
2011.4.6 ユルツナクルー イソム
「木の花ファミリー」ホームページ
「木の花ファミリー」の生活の様子がYouTubeに公開されています。